2 有理関数の積分:部分分数分解
2.1 今日の目標
有理関数
\frac{P(x)}{Q(x)}
の積分を、部分分数分解によって計算できるようにする。
有理関数の積分では、いきなり積分するのではなく、まず分母を因数分解し、簡単な分数の和に分解する。
2.2 1. 導入:部分分数分解は通分の逆
まず、次の式を通分してみる。
\frac{1}{x-1}-\frac{1}{x+1}
分母をそろえると、
\frac{1}{x-1} - \frac{1}{x+1} = \frac{x+1}{(x-1)(x+1)} - \frac{x-1}{(x-1)(x+1)}.
したがって
\frac{1}{x-1} - \frac{1}{x+1} = \frac{(x+1)-(x-1)}{(x-1)(x+1)} = \frac{2}{x^2-1}.
これは、左から右へ見れば 通分 である。
逆に見ると、
\frac{2}{x^2-1} = \frac{1}{x-1} - \frac{1}{x+1}
である。
このように、1つの分数を簡単な分数の和や差に戻すことを 部分分数分解 という。
つまり、部分分数分解は 通分の逆操作 である。
2.3 2. 有理関数とは
多項式 P(x), Q(x) を用いて
\frac{P(x)}{Q(x)}
の形で表される関数を 有理関数 という。ただし Q(x) \neq 0 とする。
例えば
\frac{1}{x^2-1}, \qquad \frac{2x+3}{x^2+x-2}, \qquad \frac{x^2+1}{x-1}
はいずれも有理関数である。
2.4 3. なぜ部分分数分解をするのか
有理関数
\frac{2}{x^2-1}
をそのまま積分するのは難しい。
しかし、部分分数分解により
\frac{2}{x^2-1} = \frac{1}{x-1} - \frac{1}{x+1}
と書ければ、
\int \frac{2}{x^2-1}\,dx = \int \left( \frac{1}{x-1} - \frac{1}{x+1} \right)\,dx
となる。
右辺は基本公式
\int \frac{1}{x-a}\,dx=\log|x-a|+C
で積分できる。
したがって
\int \frac{2}{x^2-1}\,dx = \log|x-1|-\log|x+1|+C.
2.5 4. まず確認すること:分子の次数と分母の次数
部分分数分解を使う前に、まず
\deg P(x) < \deg Q(x)
であるかを確認する。
この条件を満たす有理関数を 真分数式 という。
例えば
\frac{2x+3}{x^2+x-2}
は、分子の次数が 1、分母の次数が 2 なので真分数式である。
一方、
\frac{x^2+1}{x-1}
は、分子の次数が 2、分母の次数が 1 なので真分数式ではない。
この場合は、まず多項式の割り算を行う。
2.6 5. 多項式の割り算が必要な例
\frac{x^2+1}{x-1}
を考える。
多項式の割り算により
x^2+1=(x-1)(x+1)+2
であるから、
\frac{x^2+1}{x-1} = x+1+\frac{2}{x-1}
となる。
したがって
\int \frac{x^2+1}{x-1}\,dx = \int \left(x+1+\frac{2}{x-1}\right)\,dx
である。
よって
\int \frac{x^2+1}{x-1}\,dx = \frac{x^2}{2}+x+2\log|x-1|+C.
2.7 6. 部分分数分解の基本形
分母が一次式の積に因数分解できる場合を考える。
例えば
\frac{1}{(x-1)(x+2)}
は
\frac{1}{(x-1)(x+2)} = \frac{A}{x-1}+\frac{B}{x+2}
の形に分解できる。
ここで A,B は定数である。
この形を仮定して通分すると、
\frac{A}{x-1}+\frac{B}{x+2} = \frac{A(x+2)+B(x-1)}{(x-1)(x+2)}
となる。
したがって、部分分数分解では
1=A(x+2)+B(x-1)
となるように、定数 A,B を決めればよい。
2.8 7. 例1:基本的な部分分数分解
次を分解する。
\frac{1}{(x-1)(x+2)}
まず
\frac{1}{(x-1)(x+2)} = \frac{A}{x-1}+\frac{B}{x+2}
とおく。
両辺に (x-1)(x+2) をかけると、
1=A(x+2)+B(x-1)
となる。
x=1 を代入すると、
1=A(3)
より
A=\frac{1}{3}.
x=-2 を代入すると、
1=B(-3)
より
B=-\frac{1}{3}.
したがって
\frac{1}{(x-1)(x+2)} = \frac{1}{3}\frac{1}{x-1} - \frac{1}{3}\frac{1}{x+2}.
2.9 8. 例1を積分する
上の結果より
\int \frac{1}{(x-1)(x+2)}\,dx = \int \left( \frac{1}{3}\frac{1}{x-1} - \frac{1}{3}\frac{1}{x+2} \right)\,dx.
したがって
\int \frac{1}{(x-1)(x+2)}\,dx = \frac{1}{3}\log|x-1| - \frac{1}{3}\log|x+2| +C.
まとめると
\boxed{ \int \frac{1}{(x-1)(x+2)}\,dx = \frac{1}{3}\log|x-1| - \frac{1}{3}\log|x+2| +C }
である。
2.10 9. 例2:係数を比較する方法
次を分解する。
\frac{2x+3}{(x-1)(x+2)}
まず
\frac{2x+3}{(x-1)(x+2)} = \frac{A}{x-1}+\frac{B}{x+2}
とおく。
両辺に (x-1)(x+2) をかけると、
2x+3=A(x+2)+B(x-1)
である。
右辺を展開すると
A(x+2)+B(x-1) = (A+B)x+(2A-B)
である。
よって
2x+3=(A+B)x+(2A-B)
だから、係数を比較して
A+B=2,
2A-B=3
を得る。
これを解くと
A=\frac{5}{3}, \qquad B=\frac{1}{3}.
したがって
\frac{2x+3}{(x-1)(x+2)} = \frac{5}{3}\frac{1}{x-1} + \frac{1}{3}\frac{1}{x+2}.
よって
\int \frac{2x+3}{(x-1)(x+2)}\,dx = \frac{5}{3}\log|x-1| + \frac{1}{3}\log|x+2| +C.
2.11 10. 重解がある場合
分母に同じ因数が繰り返し現れる場合は注意する。
例えば
\frac{1}{(x-1)^2(x+2)}
では
\frac{1}{(x-1)^2(x+2)} = \frac{A}{x-1} + \frac{B}{(x-1)^2} + \frac{C}{x+2}
とおく。
重要なのは、(x-1)^2 があるときは
\frac{A}{x-1} + \frac{B}{(x-1)^2}
のように、1乗と2乗の両方を用意することである。
2.12 11. 部分分数分解の手順
- 分子の次数が分母の次数より小さいか確認する。
- そうでなければ、多項式の割り算をする。
- 分母を因数分解する。
- 因数に応じて部分分数の形を作る。
- 両辺に分母をかける。
- 代入または係数比較で定数を求める。
- 各項を積分する。
2.13 12. 基本となる積分公式
部分分数分解の後は、次の公式を使う。
\int \frac{1}{x-a}\,dx = \log|x-a|+C.
また、
\int \frac{1}{(x-a)^2}\,dx = -\frac{1}{x-a}+C.
一般に n\neq 1 のとき
\int \frac{1}{(x-a)^n}\,dx = -\frac{1}{n-1}\frac{1}{(x-a)^{n-1}}+C.
2.14 13. 授業内練習1:通分
次を通分せよ。
\frac{1}{x-1}-\frac{1}{x+1}
解答を表示
\frac{1}{x-1} - \frac{1}{x+1} = \frac{x+1}{(x-1)(x+1)} - \frac{x-1}{(x-1)(x+1)}
である。
したがって
\frac{1}{x-1} - \frac{1}{x+1} = \frac{(x+1)-(x-1)}{(x-1)(x+1)} = \frac{2}{x^2-1}.
2.15 14. 授業内練習2:部分分数分解
次を部分分数分解せよ。
\frac{1}{x^2-1}
解答を表示
まず
x^2-1=(x-1)(x+1)
である。
したがって
\frac{1}{x^2-1} = \frac{A}{x-1}+\frac{B}{x+1}
とおく。
両辺に (x-1)(x+1) をかけると
1=A(x+1)+B(x-1)
である。
x=1 を代入すると
1=2A
より
A=\frac{1}{2}.
x=-1 を代入すると
1=-2B
より
B=-\frac{1}{2}.
したがって
\frac{1}{x^2-1} = \frac{1}{2}\frac{1}{x-1} - \frac{1}{2}\frac{1}{x+1}.
2.16 15. 授業内練習3:積分
次を計算せよ。
\int \frac{1}{x^2-1}\,dx
解答を表示
前の結果より
\frac{1}{x^2-1} = \frac{1}{2}\frac{1}{x-1} - \frac{1}{2}\frac{1}{x+1}.
したがって
\int \frac{1}{x^2-1}\,dx = \frac{1}{2}\int \frac{1}{x-1}\,dx - \frac{1}{2}\int \frac{1}{x+1}\,dx.
よって
\int \frac{1}{x^2-1}\,dx = \frac{1}{2}\log|x-1| - \frac{1}{2}\log|x+1| +C.
2.17 16. まとめ
有理関数の積分では、次の流れを意識する。
\text{有理関数} \longrightarrow \text{部分分数分解} \longrightarrow \text{基本公式で積分}
部分分数分解は、通分の逆である。
したがって、分母を因数分解し、
\frac{A}{x-a}+\frac{B}{x-b}
のような形を仮定し、通分したときに元の分子と一致するように A,B を決めればよい。
2.18 17. Moodle+STACK演習
この後、Moodleで次を練習する。
- 通分
- 部分分数分解
- 有理関数の積分
- 多項式の割り算が必要な場合
- 重解を含む場合